Covid-19収束後 どうなる?海外駐在のあり方

キャリア
 
2020年、コロナウイルスのパンデミックが国内外での企業活動に大きな変化をもたらした。
 
異国の地においてこれを迎えた駐在員の一部は一時帰国し、ある人は家族を一時帰国させてひとり残り、またある家族は駐在国に残留することとなった。
2020年春の人事異動の計画が変更となり帰任が延期となったり、新規赴任の予定が中止になったという話も聞く。
企業によっては旧担当者が帰国したものの交替の駐在員の赴任が延期となり、空白の期間が生じているところもある。
 
数カ月に渡る生活と経済活動の混乱は、企業の海外拠点の組織と駐在員のあり方に大きな変化を生じさせた。

ポストコロナの海外駐在のあり方は変わるのだろうか?

予想される変化は次の様なもの。

  • 海外駐在員の削減・現地化の推進
  • 期待される役割の追加と変化
  • 人事考課の為の社内アピール方法
 
 

海外駐在員の削減・現地化の推進

経費節減の圧力、事業再構築の波。

Covid-19パンデミックによって世界的同時不況を迎えた。

エッセンシャルと称されるインフラ、医薬品、食品などを除いた産業分野は大きな打撃を受け、回復の時期はここ十数年にあった不況の類に比べると長期化する恐れがある。

企業の経営陣はいま、今年度の予算の見直しと同時に事業の中期経営計画を再構築することが課題。

ここで、海外駐在員の配置の意味を単純化して4つに分類してみると、

    1. 海外事業所の経営幹部として事業を取り仕切る。
    2. 海外事業所の立上げ、現地社員に対する指導・教育係。
    3. 日系顧客の現地日本人窓口業務。
    4. 本社と海外事業所における部署間の連絡窓口、コーディネーター役。
    5. 人材育成の過程として、若手社員が海外駐在経験を積む。

この1~4の順番は企業経営の緊急性と必要性の順番となる。

つまり4→1という降順で「経費節減」の為に優先的に見直しがされる。

また、日本国内においてもリモートワークやお客様とのWeb会議が増える中で、現地に駐在する理屈は薄らいでいく。国を跨いだ仕事の仕方も業務改革が求められるのは必然である。

  • 先ずは最近の東南アジアに多い、20-30代前半の海外駐在が廃止、減少する。
  • 次に部署間の連絡窓口をする海外駐在が廃止され、現地社員に置き換わる。
  • 日系のお客様が海外駐在員を廃止した場合は当社側の駐在員存在理由が低下する。
  • 海外事業立ち上げや指導・教育は駐在ではなく、定年退職者の現地採用契約などで人件費削減。
  • 最終的には経営幹部の現地化も進む。

日系企業においては本社側にいまだ言葉の壁(英語でビジネスを進められない)があったり、企業統治のスタイルとして海外事業体のトップは本国から派遣するという方針から、数年内にドラスティックな変化をする会社は多くはないと思われるが、方向性は概ね上記の様になる。

 


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期待される役割の追加と変化

本社対応の業務の増加、現地化スピードアップ。

上記に述べた様に、海外駐在員の削減が予想される。

残った駐在員はこれまで複数人で分担していた本社対応の業務を改めて振り分けしなければならない。

海外駐在員に期待される役割には現地事業会社の業務の本質のほかに次の様なものがある。

  • 本社との連絡係。
  • JV(合弁会社)の場合はお目付け、密偵役。
  • 日本からの出張者のコーディネーション。

これらに対して、これまでよりもテリトリーを拡げて対応しなければいけなくなる。

状況によっては、従来レベルのきめ細やかな情報展開や対応が叶わなくなる。

ただし日本からの出張者対応については暫くの間は頻度が減るので、問題が少ないかもしれない。

いずれにしろ、少ないリソースで現状以上のパフォーマンスを上げるためには、現地社員への業務移管や権限移譲のスピードアップが必然となる。

いつまでも「現地にはまだまだ任せられない」という言葉は使うべきではない。

この言葉は裏を返せば、海外駐在員が現地社員を育てられていないという自己否定になる。

いや、むしろ意図的に現地化を進めていない様にさえ思える。

西洋系の多国籍企業に属する自身が、日系企業の海外事業体と海外駐在を観察して時々感じることは、

  • 海外事業体トップ自身が日本からの出向者の場合は、手足となる駐在員は減らしたがらない。
  • 日本の本社側社員が駐在員を便利に扱っている。
  • 駐在員はそのポジションを現地化して発展的解消することを積極的に進めない。むしろ、自身が本帰国した後にも存続させることを意識している。

これらがアフターコロナ・ポストコロナでどの様に変わっていくかを注視している。


人事考課の為の社内アピール方法 

本社の上層部との接触回数の減少、存在感の低下リスク。

海外駐在のメリットのひとつには、日本では会う機会の少ない役員や上層部が出張に来た際に直接に会話して存在をアピールできること。そこから、本帰国後の出世の道が開ける可能性があること。

また、本社での上司にあたる人が来た際に食事を含めて長い時間、異国の地でアテンドすることより濃い時間を共有することにより、より強い印象付けができること。

また、普段は傍にいないので小さなミスが上司の目に留まらない。

アフターコロナ・ポストコロナにより彼らの出張回数が減り、本社上層部や上司にあたる人々にとって海外駐在員の存在感が薄くなる

日本への出張頻度も減る。

人事考課、パフォーマンスレビューさえもWeb会議だけで済まされるかもしれない。

存在感が薄くなると、究極的にはその海外駐在のポジションさえ廃止される可能性も出てくる。

これからは社内アピールの方法に工夫が必要となる。例えば、

  • Web会議で人事考課面談をする時に業務実績のポートフォリオと業務計画をわかりやすくプレゼンテーションする。
  • 会議などでは、積極的に発言を行い印象付けを意識する。

ビフォーコロナのこれまでのやり方のままでは、存在感と評価は上がり得ない。

 


海外駐在員が生き残る為に実践すること

専門分野+αのスキルアップ。海外事業体に必要な人材と認められる。

上記で述べた様に、現地化をスピードアップして海外駐在員は減少する。

従来の様に「既存のポジションだから」や「人材教育のプロセス」、「日系企業の窓口」という理由だけでは、日本にいる社員の数倍のコストをかけて海外駐在のポストは配置されない。

これからの企業は海外駐在員に対してシビアに価値を求めることになる。

最後に残る海外駐在員のポストは

  • 本社の役員候補の登竜門として海外事業体を経営するハイポジション。
  • 海外事業体トップを補佐するミドルポジション。主に財務、経営企画。

それ以外のポストは現地化、あるいは日本人でも現地採用に移行していく。

海外駐在として生き残る為には、上記のハイポジションを目指すか、その補佐を目指す。

そのためには専門分野に加えて、企業経営及び財務に関するスキルを身につけるべき。

 

あるいは、そもそもの「海外駐在」という枠から出て「海外現地採用」も道なのでは。

日本で逆出向の形で働くということもあるかもしれない。

ソニーや日産自動車、トヨタ自動車などは北米の事業体出身者が本社の役員になる実例もある。

 


~文末~

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